母さん自身の服も、父さんの背広も、全部母さんがミシンでぬっていました。おかげで、学校に行ったとき、ホセフィーナ先生やほかの先生たちが、慎ちゃんの服装を見て、
「ケー ボニート ベスティード」(まあきれいな服ね)と言ってくれたとき、
「ミ、ママ」(ぼくの母さん)
と服を指さすだけで先生たちは理解してくれたようです。
ホセフィーナ先生は、アルファベットがやっと読めるようになってきた慎ちゃんに、優しくていねいに、そしてしんぼう強くいろんなことを教えてくれました。一番印象に残っているのは、このようなスペイン語の発音の練習でした。
bra,bre,bri,bro,bru
bla,ble,bli,blo,blu
cra,cre,cri,cro,cru
cla,cle,cli,clo,clu
dra,dre,dri,dro,dru
fra,fre,fri,fro,fru
fla,fle,fli,flo,flu
……
慎ちゃんが聞いたこともない音は、初めはとても難しく、どうしても「bra」が「bura」という発音になってしまうのです。ホセフィーナ先生は授業の始めに必ずこの発音練習を取りいれました。
慎ちゃんも自転車をこぎながら登下校のとき、一生けん命この舌をかみそうな発音の反復練習をしました。おかげで、一カ月もしないうちにどんな音でも出せるようになっていました。
スペイン語は日本語の発音とよくにています。その中で、一番簡単におぼえるスペイン語は、牛のvaca(バーカ)、それに、にんにくのajo(アーホ)。だから、子どもたちは、最初に覚えたこの二つのスペイン語だけを使って、おたがいに「バーカ」「アーホ」と言い合っては、「おれ、牛とにんにくって言っただけだんだもんね」とか、「アーホを売ってバーカを買った」(にんにくを売って、牛を買った)というような言葉遊びをして笑い合っていました。
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