流暢な日本語を話す女性は一瞬で亜美の心を掴み、そして警戒心を溶かしてくれた。

「日本語上手ですね! なぜわたしのことを?」

「それはこれから」

そう言って彼女はウインクした。

「ソフィア、あなたのミドルネームが〝サクラ〟でしたよね?」

「そうです、サクラと呼んでくれてもいいですよ!」

「どうして両親のことを?」

「それもこれから!」

「ええ?」

ロビーを出て、車に乗り込んだ。

「まず、日本・パラオ友好の橋へ行きましょう」

そう行ってソフィアはハンドルを握った。

「その後は? きれいな海! ミルキーウェイへ行きたーい!」

前回の楽し過ぎた女子旅を思い出しながら亜美は言った。

「いいや、まず先に一番大事なところへ行っていただきます」

「えー……」

この橋は以前に米国政府の発注でとある企業が造ったが、欠陥工事の噂が後を絶たず、その後残念ながら壊れてしまったそうで、死亡者も出たそうだ。暗黒の9月事件と言われ、それによりインフラがズタズタになり、非常事態宣言が出された。そのときにはその企業が既になくなっていたので、賠償がなされなかったそうだ。

そこに日本が手を差し伸べて鹿島建設が無償で造り直しをした。それ以来日本・パラオ友好の橋と言われている。ソフィアは運転しながらそう説明してくれた。この橋を走り抜けてから、しばらく車に乗り、着いたのは港だった。

「さあ、ここでボートに乗り換えてペリリュー島へ向かいます。1時間半くらいで着きます」

コロール島では見られないような美しい風景を見ながら二人でボートに乗っていった。そしてペリリュー島へ到着した。

「まず、神社へ行きます」

「ええ? 神社?」

亜美はこの南のきれいな島で、なんでビーチじゃなくて神社なのよ……と思いながら、その想いを顔に出さないように頑張った。ボートを降りてソフィアの後をついて歩いているうちに、母から聞いたことのある、身近な祖先でペリリューの戦いで戦死した人がいたという話を思い出した。

「あなたのお父さんとお母さんはかつてここへ旅行に来ました。そしてあなたのお母さんはこの地であなたの魂を宿したのです」

「ええ? そうなのですか?」

「そうです。そしてあなたは記憶にはないかもしれないけど、まだ小さいときにお父さんとお母さんがあなたを連れてまたここを訪れました」

「そう、それは写真と映像が残っていたし、ゴーグル越しに見た魚たちの記憶があるわ」

 

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