それから、くるみは笹川の家に転がり込み、前の家を引き払った。
千春にその話をすると、もし笹川と何かあったら千春の家においでと言われた。またくるみが自分のキャリアについて真剣に向き合おうとしていることがうれしいようだった。
「お邪魔します……」
「今日からここがくるみさんのお家ですよ」
「そうですよね、なんだか変な感じです」
業者に荷物を運び込んでもらい、改めて部屋の中に入る。一人暮らしだったからそれほど荷物も多くなく、すべて収まりそうだった。
「片付け、手伝います」
「ありがとうございます」
「そんなに多くないので、夕飯までには終えたいですね。今日のご飯は僕が作ります」
笹川の優しさに触れるだけでうれしい。くるみは笹川と並んで段ボール箱の整理をしながら、これからの暮らしを想像した。
それから……毎日一緒にいられると思っていたが、実際笹川が准教授になってから目に見えて忙しそうになった。同棲をはじめておよそ1ヶ月。一緒にいられる時間はそれほど長くない。
受け持つ講義の時間も増え、それに伴って学生のレポートなどをチェックする時間も増えた。自分の研究をする時間も作らなきゃならないとかで、この間まではくるみが会社で働いていたときと同じような時間に帰ってきていたが、今は22時を回ることも多い。
「笹川さん。お疲れさまです」
「くるみさんも1日、お疲れさまでした」
それでも、毎日こうして布団に入る前に抱きしめて、スキンシップをくれる。くるみは日中、デザインの通信講座で勉強し、夜ご飯もネットでレシピを見ながら作るようになった。デザインは勉強してみると楽しくて、もっと早くに勉強しておけばよかったと思うこともしばしばだった。