本章 リカバリー体験を語る会[初日]
なぜ語るのか
よろしくお願いします。
このたび、リカバリー体験を語る機会をいただいた大瀧夏箕と申します。家族からは、なっちゃんと愛称で呼ばれていて。そうですね。親しみのある家族の中で育ったと思います。
ただ、家族総じて、どちらかというと口数の少ない、人との関わりや気持ちを口にするのが苦手なタイプの人の中で育ってきたと思います。
その時々に、それが良かったのか悪かったのかはわかりませんが、いまとなっては、それぞれに乗り越えるべき素敵な出会いがあったのだから、良かったんじゃないかと思っています。
さて、本日は、ワーカーさんのご協力もあり、ワーカーさんからご質問いただく形で、体験談を語る機会をいただきました。
このインタビューは録音してあって、このあとテープ起こしをして、わたしがひとり語りをするという形式に文章を書き直して、皆さんにお伝えしようと思っております。
少しお時間をいただきますが、統合失調症のわからなさにご興味のある方には、お耳を拝借できましたら、大変ありがたくこころより感謝申し上げます。
さて、さっそくですが、本題に入りましょう。
まず最初にご質問をいただきました。
「体験談を語ろうと思ったのはどうしてですか?」
はい。それはですね、近況からお話しするのが良いかと思います。
近頃のわたしはですね、父に聞き書きを始めたんです。聞き書き、ってご存じでしょうか?
たとえばご年配の人は長く生きてきてそれぞれ豊富なストーリーをお持ちです。それは歩く一つの図書館と、よく喩えられます。
図書館には貴重な本が詰まっていますよね。年配の方の人生経験は一つ一つがそれくらい貴重なもので、それを抱えて、ある日亡くなられるかもしれないわけです。
それは、よく言われるように街にある図書館が一つ消失すると想像するとわかりやすいかもしれません。
人がおひとり亡くなられるというのは、そういうことだとわたしも考えるのです。あるいは、そのような重たい考え方をしなくとも、先輩であるご年配の皆さんはたくさんの知恵や技術をお持ちです。
そのお話を聞きたい、後世の人に残したいと思うのはごく自然な流れだと思うのです。そのような流れから始まったのが、聞き書きという取り組みで、その聞きたい、残したいという人々が、話してもいいよ、という語り手の人と手を携えて生まれてきた活動だと想像できます。