記憶の崩落に抗うすべもなく、宇宙船のハッチを越えた。

入口には天空を思わせる高天井の大ホールがあった。その内壁はすべてが貴金属で覆われ、宝石の星々を埋め込んでひとつの銀河を凝縮したかのように輝いている。眩耀がまぶたに迫り、視界を奪われたジュランの前に、煌然とした超現代的装飾とハイテク機器が一体となった、まさに幻想と科学が交錯する荘厳な宇宙の宮殿が現れた。

フロアは透徹した水晶が一面に敷かれ、表面を微細な光線が走っている。白金と瑠璃の交差する巨柱が天井へ伸び、星団を象る紋様を浮かび上がらせている。壁際には未知の機構が閃々と脈動し、宝石を嵌めた装飾と調和して異界の厳威を顕していた。

輝き渡る通路を歩いていくと、いくつもの部屋があった。リフィエラは宮廷式の格調高い装飾模様で縁取られた部屋の入口を入り、中を見せてくれた。

天井が何階もの高さに及ぶ室内の神々しさにジュランは圧倒された。ホワイトゴールドの壁がペールブルーの照明に映し出された様相は、晴れた空を思わせる清澄さだ。斬新なインテリアは白と空色の宝石からなり、随所にダイヤモンドや貴金属の彫刻模様が施されている。

室内の奥に威信ある空間芸術の映像、すなわち実物大の人物の立体映像がくっきりと現れていた。

「兄、ロイセルの肖像よ」と、リフィエラが誇らしげに教えてくれた。

典雅な装束を纏った崇高な風貌の人物像は凛々しく、威厳ある身なりは王族であることを物語っている。ジュランはその肖像を目にした瞬間、得体の知れない慕わしさが込み上げ、心の秘奥が締め付けられるのを不思議に思った。

〈どなただろう。昔どこかでお会いした気がするなんて、どうかしてしまったのか〉

古い記憶のトンネルを探ってみたが、どうしても思い出せない。リフィエラは黙って慈悲深いまなざしを彼女に向けている。ロイセルの肖像の前でわけのわからない感動に揺れていた。

リフィエラは客室へ彼女を連れていった。室内の壁は水晶やダイヤモンドなどの鉱物で造り上げられていた。透明な建材の美しさに見とれ、懐旧と安らぎに包まれる感覚が蘇ってきた。どうしたことだろう、と再び記憶の底を探り当てようとしたが、何も思い出せない。

「ここはあなたが泊まったお気に入りのゲストルームなのよ」

リフィエラは瑞々しい声で秘密めいたことを明かした。

〈私が泊まった部屋?〉

思いがけない事態に動揺し、昔、自分に何かが起こったのではないかとジュランは気になり始めた。その心の動きを見抜いたのか、リフィエラは典雅な口調で語り始めた。

「この地底湖には、知られざる清水が流れているの」

リフィエラはこの水に、活力を与える特別な成分が含まれていると説明した。

「あなたはとても疲れているわね。まずは心身を癒やしましょう。記憶の扉を開けるのはそれからよ」

何もかも知っている話しぶりのリフィエラは、かろうじて命をつないでいる傷心のジュランを愛情深くいたわってくれた。

次回更新は5月22日(金)、7時の予定です。

 

👉『ルイセイⅠ』連載記事一覧はこちら

【イチオシ記事】触り方が変わってからは、指1本で支配された。何度も奉仕され、「もういい」と言っても、彼は止まらなくて…

【注目記事】心はすれ違っているのに、夫婦の営みを求める夫…夜は断ってはいけない気がして耐えた。苦痛で、一番辛かった。