「千晶先生、私、あとどれくらい生きられますか?」
「先程ご説明したような治療をすれば、生存期間中央値は1から3年。全ての治療を行わなかった場合、生存期間中央値は3から6か月です」
「3から6か月……」
先程まで強気だった小百合も余命宣告を受けてさすがに顔を青くしていた。
「お母さん、考え直して。お願い」
麻利衣は背後から小百合の両肩を掴んで懇願した。肩を揺すられながら彼女はしばらく考えたのち言った。
「そんなにきつい思いをして1、2年しか生きられないんじゃしょうがないわね。やっぱり私、其田先生の治療を続けるわ。其田先生なら私の病気を完治させられる。そしたら麻利衣が国試に合格するのも見られるし、時々こうやって東京に来て一緒に遊べるし」
「お母さん!」
「其田先生って?」
千晶が訊ねた。
「後で話すわ」
麻利衣は小百合だけ先に退室させ、千晶に事情を説明した。
「それなら知ってる」
千晶が腕組みしながら言った。
「えっ、千晶も知ってるの?」
「あの動画サイトに出てた女性、実はこの病院の呼吸器外科に通院していた患者なのよ」
「えっ、そうだったの? じゃあ、あの人の肺癌が消えたのって……」
「本当よ」
「えっ! そんなまさか。気功法でステージ4の肺癌があっという間に消えてなくなるなんてありえないでしょ」
「呼吸器外科の主治医も首を捻っていたわ。化学療法も効かなくて数か月前には緩和医療に切り替えていたのに、其田治療院での治療後、本人の希望で検査したら癌が跡形もなく消えていた。私も画像を見せてもらったから間違いないわ」
「そんな……」
「私だって信じられないけど、もしほんとにそんなすごい治療法があるんだったら、患者さんがいくら払ってでも治療を受けたがるのは理解できるわ。
手術や化学療法は合併症や副作用の危険性があるのは確かだし、ステージⅣだと余命が伸びたところで数年。その間、きつい副作用に耐えないといけないし、自宅で家族と暮らす時間も短くなる。
副作用もなくて病気が完治するのならこれ以上幸せなことはないものね」
麻利衣は考え込んでしまった。
「『超能力探偵 河原賽子』新章連載記念ピックアップ」の次回更新は5月12日(火)、20時の予定です。
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