【前回記事を読む】「かなり若い美女と劇的な出会いをしたんだ」…49歳独身エリサラが出会ったのは、25歳の美女だった。
瞳に一目ぼれ
英介は後々ややこしいことになっても嫌だし美味しくお酒を飲みたいという思いもあり一線を引く思いで早川に言った。
「風間さん顔が怖いですよ。ええ、安心して下さい、誰にも言いません。ですが一人の人間として私の悩みぐらいは聞いてもらえませんか。……一人一悩みずつ」
「一人一悩みずつということは僕もですか」
一瞬、英介は早川の薬指に結婚指輪があるのを見た。悩んだがあまり自分のプライベートを知らない早川に相談するのも一つかと思い承諾した。
「失礼ですが早川さんはおいくつなんですか」
英介はちらりと早川の顔を覗いた。
「いくつに見えます」
早川も目をギョロリとして英介を見てきた。
英介としては気持ち悪いなー。美女に言われるならばともかく何でおっさんの年齢を当てなくてはならないんだと思った。
英介は当てずっぽで答えた。
「五十五歳ですか」
早川はクイズミリオネアの司会者のようにジーッと見つめてきた。
英介は何だよ見つめてきて、というかめちゃくちゃ近い……近いんだけど早く言ってくれよと思った。
そのシーンを生ビールを飲みながら見ていたトムもチューさせてやろうかと思った。
「トム、いたずらはダメだからね!」
トムの横にスーツ姿で髪をあげメガネをかけた綺麗なお姉さん姿のジュウェルが座っていた。
ジュウェルの綺麗な姿にトムは驚いた。
とその時……。
「正解!」
公男の声が店のあらゆるところに響いた。
英介は正解したことよりも声の大きさにびっくりした。そしておっさん酔っているのか、まだ生ビール一杯目だぞ、テンション高いなぁと思った。
「風間さんは人を見る目がやっぱり違うなぁー」
早川は涙目で英介を見てきた。
英介は早川の涙目にびっくりした。
「早川さんどうなされたのですか。何か私しましたでしょうか」
「いえ、久しぶりにこんなテンションで人と飲んでいるんだなぁと思いましてね。嬉しくなっちゃったら何だか自然と涙が出てきちゃいました。すみません」
「何かあったのですか」
「ええ。こんなこと風間さんに話して良いものかわからないんですが……」
「ほら、早川さん。言ったじゃないですか、一人の人間として一人一悩みずつって」
英介は早川に微笑みかけた。
「そうですね、そうでしたね」
早川は姿勢を正し、表情を変えて言った。
「実は……会社の売上がここ数年下降気味で五十歳以上の社員対象に早期希望退職もしくはグループ会社への転籍を言われているんです。
入社以来お世話になっている上司の上垣部長は、今回のプロジェクトで結果が出ない場合責任を取り辞表を出されると聞いております。だからこそ何としても今回のプロジェクトで結果を残さなくてはいけないと思いまして……あっ、仕事の話をしてしまった!」
英介は少し間を置き重い口を開いた。
「悩んでいても時間の無駄です。実際、私はあなたの取引先の者です。今回のプロジェクトに関しての権限はメインスポンサーである菱井ホールディングス経営企画部長であるここにいる私にあります」