第3章 いかにして人を資産化するか
資産づくりのための時間を見出せるか
ここでふたつの問題が生じます。
ひとつは現在の利益が、収支トントンに当たる人件費の2倍であり、さらに企業が成長するために利益目標を3倍に設定した場合、成長分の1倍の追加利益を確保するための時間をつくることができるかということ。もうひとつの問題は、年間総労働時間1740時間のうち5%に相当する87時間を使って教育を行ったことで算出された時間当たり単価5万7460円が現実的に可能な数字であるのかという問題です。
87時間の中で新たに年間500万円の価値を生み出すためには、時間当たり5万7460円の価値を生み出さなければならなくなります。ずいぶん高い時間単価となります。空理空論になっていないかという疑問が生じます。
では最初の問題、人を資産として育て上げるための時間を企業が合理的に見出せるのかについて考えたいと思います。現在の年間総労働時間1740時間のどこから捻出すればよいでしょうか。
仕事には、主業務と呼ばれるものがあります。営業、事務、技術、研究、製造などとその種類は異なるものの、それぞれの仕事の中核となる業務です。
これに対して、主業務を補完する業務があります。教育研修と会議です。会議には進捗、課題、対策、決定、方針伝達・上意下達などがあり、主業務を支える大きな役割を果たしています。
主業務に支障をきたすことなく人を育て上げるためには、教育研修と会議の時間をやりくりする必要があります。時間の捻出が果たして可能かどうか詳しく見ていきましょう。
下のグラフは、厚生労働省が毎年行っている能力開発基本調査の結果を記したものです。わが国の教育訓練の実施状況、人材育成、キャリア形成のための支援、職業能力評価の実施状況を調査したものです。
企業が手がける教育にはOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)とOFF-JT(オフ・ザ・ジョブ・トレーニング)のふたつがあります。OJTは、日常の業務に就きながら行われる教育訓練のことです。これに対して、OFF-JTは、業務命令に基づき、通常の仕事を一時的に離れて行う教育訓練(研修)を指します。