俳句・短歌 句集 四季 2020.10.05 句集「抱く」より三句 句集 抱く 【第10回】 松永 みよこ ―春― 身に余るミモザ抱えて人を待つ 猫の恋吾よりいくばくかは清く ―夏― 膝頭抱いて鎮まぬ青嵐 幸せを温めなおす五月かな ―秋― 千の菊抱きてあまりにも一人 りりりるり鈴虫まねてけんか終ゆ ―冬― 雪うさぎ今消えゆきし身を抱き 酉の市ちがう男の手も温し 平成の句姫、みよこの初句集を連載にてお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 物思いするも物憂し春の昼 桜草大事なものは渡せずに 躑躅咲く隣枯らしてまでも咲く
小説 『アイアムハウス』 【新連載】 由野 寿和 静岡県一家三人殺害事件発生。その家はまるで息をするかのように、いや怒っているかのように、大きく立ちはだかり悠然としていた 午前十一時。サイレンを鳴らさず、車両は静岡県藤市十燈荘(じゅっとうそう)に到着した。静岡中央市にある県警本部から十燈荘までは、藤湖をぐるっと大回りして藤市経由でトンネルを通り、小山を登ることになる。藤湖を見下ろす高級住宅街、十燈荘は、土曜の昼だが活気はない。既に外部への交通規制が敷かれているとはいえ、不気味に静まり返っている。ここで殺人事件があったことを、住民達が知っている気配はなかった。その家…
小説 『司法崩壊! ~刑務所が足りない!起訴できない!~』 【第12回】 利根川 尊徳 笑うに笑えない飲み会の話題と言えば「親の介護」「自身の持病の話」「結婚しない子どもの話」 「幸いな事に定年延長制度が適用されて、役職はなくなるが後輩の指導と受刑者へのカウンセリングを担当させてもらう事になっている」と来年以降のスケジュールを告げた。「そうか、俺は地元へ帰って、防衛関係協力企業へ再就職するよ。実家の歳取った両親の面倒を見ながら……」と里村は出身地の新潟で年老いた両親を世話しながら通称自衛隊協力企業へ再就職すると明かした。「それって、奥さんを連れてはいかないという事か?」…