「……えっと。ごめん……、びっくりしちゃった」

「ああ、そうだよね。ごめん、一方的に」

「いや……、優くんって、そんなに話せるんだね。もっと寡黙な人だと思ってた」

それは僕が前園さんに本心を見せていなかったからだ。申し訳ない気持ちがこみ上げる。

「あと、優くんの中でそんなに大袈裟なことになっているとは思わなかった」

前園さんは言葉を探し出すように、目玉を動かしている。戸惑いながらも、整理しながら僕に向き合ってくれている。きっとこれが彼女の中での友達に対する接し方なのだろう。

「この前のこと、前園さんは僕のことを逃げているって言ったけど、それは本当だと思う。あのときは認められなかったけど、僕は自分一人ではなにもできないくせに、すぐに誰かに頼ったり、人のせいにしたりしてしまう。

もっと昔からそうだったのに、自分で自分を認めたくなくて、できなかった。前園さんが言うように、僕は臆病だからさ。この前はむきになってごめんなさい」

僕がもう一度頭を下げて向き直ると、もう前園さんはいつもの笑みを取り戻していた。悲しいことも、辛いことも、全部吹き飛ばしてしまうような明るい笑顔だ。

「私も言い過ぎたよ。あの後反省した。私の方こそごめんなさい」

前園さんは真剣な表情で頭を下げて続けた。

「優くんは、臆病じゃないと思う」

「え? いや、そんなことないよ」

「ううん」前園さんは大きく首を振った。

「この前までは、たしかに臆病だったと思う。でも、今は違う。臆病な人は喧嘩中で気まずい関係の人に電話なんかしないし、会って謝ったりもしない。もう前までの優くんとは違うよ」

前園さんの言葉につられて、自分の行動が蘇る。たしかに、電話をかけたり、会うことに必死になって電車に飛び乗ったり、すらすらと言葉を口にして頭を下げたり―、そういうことは、普段の僕ならできないことだ。無我夢中だったから、そんな行動に出たのかもしれない。

「きっと、私のことだけを考えてくれてたんだよね。それなら、高校生のときの同級生の女の子にも同じようにできると思うんだ。その子のことだけを必死に考えたら、きっとその子にも伝わるんじゃないかな」

前園さんはいつものように、にこっと微笑んだ。

次回更新は5月12日(火)、11時の予定です。

 

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