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春の記

2021.1.17
阪神大震災きょう26年

震災を知らない住民が半数を超えたという。震災のニュースにふれ20年前の寄稿文を引っぱりだしてみた。中年になった神戸工業高校定時制の生徒たち、どんな大人になったでしょう。

『ニッカボッカの歌』定時制高校の青春(南悟著  解放出版社)

俺はいま 大工の華咲く 十五歳 足場に上り 破風板を打つ

トンカチで 釘打つ仕事の 最中に 自分の手たたき 皮がめくれる

足場にて 可愛い娘見とれ 踏みはずし 番線からまり ニッカびりびり

やりました 仕事みつかり うれしいなぁ トンカツ屋さん 給料ほしい

鉄工所 だるさ我慢 スイッチオン 今日も格闘 マニシング

ニッカポッカは建設現場などで見かける作業着。まだ15歳の高一少年たちがこのような仕事の歌を詠んでいます。国語の時間に指を折りつつ短歌を作る生徒たちに、ありのままを詠むようにと促す著者・南先生、その授業風景、連休さなかの5月4日、NHKテレビで見た方もあるかもしれません。

その番組「卒業のうた ― 夜の教室青春の短歌」放映の頃、17歳の空恐ろしい事件が相次ぎました。事件の少年らが神戸工業高校夜間定時制に通っていたなら、そこまで駆り立てられなかったでしょう。なぜか、それは生徒の短歌を詠むと察せられます。

少ししか 通えなかった 学校に 楽しみながら いま通ってる

友だちと 遊びほうけた あの頃の 自分に見せたい 今のがんばり

まわり道 多くの仕事 経験し やっと見つけた 自分の居場所

仕事して 学校来るの しんどいが 友達いるから 頑張れるのだ

いま、北海道有珠山の噴火で長い避難生活を強いられている人が多くいます。神戸は5年前大震災に遭いました。自分もそうですが人は離れた地で大きな被害を被った人々を忘れがちです。せめて痛手を負った人を思い遣る心を無くさないようにと〈震災を詠む〉に思いました。

手に負へん 崩壊家屋 数えきれん ジャッキアップしまくり まだ五〇軒

震災で 神戸デパート 焼け崩れ 涙ながらに 仕事失う

かけつける 友の住まいは 崩れおり 生き埋めの友に われは無力

立ち直りに向け震災2日後、自家の片づけを後回しに18歳少年は新聞配達。

木枯らしの ガレキの中を 探し当て 吐く息白く 新聞配る

「どのような失敗や挫折や障害があるにせよ、それが癒され、人として生きる力が与えられる不思議な学校」、読めばあなたも在校生。