はじめに
この物語の舞台となるジンバブエ共和国は、アフリカの南部に位置する小国である。
東西南北をボツワナ、モザンビーク、ナミビア、ザンビア、南アフリカに囲まれ、人口は一四〇〇万人の独立国であるが、独立以前はイギリス領南ローデシアだった。
高原地帯の涼冷な気候は農業に適していて、アフリカの穀物庫とも呼ばれた一方で、金、プラチナ、クロム等の鉱物資源も豊富で、ヨーロッパではこの国のことを「アフリカの真珠」と呼んでいた。
一九八〇年、英国植民地から独立し、ジンバブエ共和国となり、その時国民軍を率いたロバート・ムガベが後に大統領となった。
はじめの頃、旧南ローデシアの白人とは共存して、白人の大規模農園や工業に黒人が使われて平和な状態だったが、長期政権が続くと必ずと言ってよいほど起きる権力と財力の私有化が次第に強大になっていき、高齢ムガベの公的立場と私的生活の混同、政治的腐敗も重なり、次第に社会が混乱へと傾いていった。
コレラ、HIVなどの感染者が多くなり、子供の四人に一人が孤児になっている状況で、経済も悪化の一途を辿る。インフレは高騰し、国民は一切れ二〇〇〇億ドルのパンを買う状態にまで陥っていった。