ちょうどこの三郎商店街ができた頃、商店街の一角にお地蔵さんがひっそりとたたずんでいた。この小さな空き地に物置きを建てるため、お地蔵さんの横の地面を掘っていたところ、木の箱に入った仏像が出てきた。その仏像は恵比寿様であった。不思議なことに、その恵比寿様の右腕には濃い緑色の数珠がはまっていた。

「以前、調べたことがあるが、三郎商店街という名は、恵比寿様の異名である三郎に由来しているんだ。かつて恵比寿様が降り立ったことから三郎という名前が使われ始めたんだが、もしかすると……」市瀬は息を飲んだ。

「もしかすると、何だい?」鈴木が続きを促した。

「サブちゃんは、恵比寿様の再来じゃねえのか? ああやって姿を変えて現れ、三郎商店街を救ってくれたんだよ!」

市瀬の話を聞いた皆は、一様に黙り込んだ。

「麻帆さん、サブちゃんはどこだい?」市瀬は聞いた。

「あれ、おかしいね。さっきまでそこにいたはずだけど」麻帆は家中を探したが、サブちゃんの姿は見当たらない。皆は手分けしてさんざん商店街中を探し回ったが、結局、サブちゃんを見つけることはできなかった。

それから数日、商店街は忽然と消えてしまったサブちゃんの噂で持ち切りだった。節子と麻帆は、偶然手に入れた大金を「サブちゃん基金」と名づけて商店街に寄付した。

商店街はその寄付を元手に、三郎商店街の空き地に立派な恵比寿様をお祀りする神社を建て、その神社の名前を〝三郎えびす神社〟と名付け、毎年盛大なお祭りをすることになった。また、老朽化したアーケードを修復し、空き店舗を若者に格安で貸し出し始めた。商店街は少しずつ活気を取り戻していった。

小春日和のある日、市瀬はアーケードでばったり鈴木と会った。賑わう商店街を眺めた鈴木は、「いつかサブちゃんにも遊びに来てほしいな」とつぶやいた。市瀬は「そのうち、またひょっこり現れるよ」と言って、鈴木の肩を叩いた。舞い散る桜の花びらが、市瀬の右手に落ちた。

 

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