【前回の記事を読む】「結構簡単に入れそうじゃね?」「他の事務所よりは簡単かも」――説明会中、男子高校生2人がぺちゃくちゃと話し出して… 

第3章 迷い、挑戦

聞いていたわけではないが、自然と耳に入ってきた。よく見ると周りもそんな感じだった。最初の緊張感はどこにいったのやら。すると亀井が突然、由香のマイクを奪ってこう言った。

「おい、お前らちょっと勘違いしてねーか?」

一瞬で会場が凍りついた。亀井は続ける。

「確かに、未経験者の募集は他の事務所にはないことだ。普通は専門学校や養成所でみっちりやって、そこから各事務所でオーディションを行い、合格した奴がキャストになれる。これはな、ある意味俺の挑戦でもあるんだ」

さっきより亀井の表情がより険しくなった。かなり怒っている。

「未経験でも正しい方法と十分な努力があれば報われる。それが証明できるかどうかのね。だから、せめて高い志がないとこの企画には参加する資格はない」

そう言って亀井は指を差した。一瞬大輔は自分に向けられたのかと思った。

「特に一番後ろにいる2人組! お前らにその志があるのか? 俺が見る限り一欠片もないね!」

さっきまで笑っていた2人だが激しく動揺していた。

「この後面接だが、それなりの質問はするぞ。覚悟しておけよ。レッスンもそれなりにハードだぞ。なんせ2年くらいかけてやることを1年でやるからな。もし、怖気づいたり、こんな奴の下でやりたくないと少しでも思ったら今ここで退場してくれ」

「亀井さん!」

由香は制止するように言った。だが、亀井は無視した。

「5分やる。俺らは一旦退場する。その間に出たい奴は出ろ!」

そう言って、亀井は由香を引っ張り退場した。するとさんざん言われた2人組は鼻で笑ってこう言った。

「……なんだあいつ」

「いわゆる根性論? 精神論? 今時はやんねーよ」

「これならまだ専門学校や養成所に行ったほうがましだな。出ようぜ」

と、愚痴を言って続々と退場する人がいる中、大輔は迷っていた。

(確かに、まともな人とは思えないけど……。でも、言ってることは間違ってないよな)

他の奴らはまだ若いから、専門学校とか他の選択肢は十分にある。でも自分は? 正直若いと呼ばれるギリギリの年齢。他の奴らと同じ道歩んでもダメだ。もちろん、これが正しいかはわからない。でもここで引いたらなんだか後悔しそう。