【前回の記事を読む】「ギランバレー症候群」がアスリート選手を襲った——神経障害で手足が動かなくなる。心臓の筋肉も衰え、やがて…
第3章 迷い、挑戦
――――ちょうどそのころ――――
「おい由香、募集はどうなってる?」
事務所創設者の亀井がマネージャーの由香に尋ねた。
「亀井さん……、全然集まんないですよ~」
「何人かは集まると思ってはいたが……なぜだ……」
「絶対、絶対亀井さんのせいですよ! あんな圧力かけるから」
「ああ? そりゃ生半可な奴がきたって意味ねーだろうが!」
「それはそうなんですけど、聞く時の顔がもうヤクザみたいで怖すぎです」
「誰がヤクザや! 社長だぞ俺は!」
声優事務所「if」は現在、志望者募集のため各地説明会と面談を行っていた。ところが、説明会の時はそこそこ集まるのだが、その後の亀井社長との面談でほとんどの志望者が委縮して、育成プロジェクトの参加を辞退してしまい今現在、参加者0である。
「まだ検討中の方が何人かいるので……あ、電話だ」
〈――〉
「はい、if事務所です。……はい! ……はい……あ……わかりました」
〈――〉
「いえいえ、こちらこそ説明会に足を運んでいただいてありがとうございました。失礼します……」
由香は電話を切った。
「そのやりとりだと辞退だな」
「も――――全滅じゃないですか!」
「知らんわ! まだ説明会はいくつかあるだろう。次はいつや?」
「来月ですけど、亀井さんここ地方ですよ。なんでこんなところで? 場所が場所なので参加人数も数人程度ですよ」
「逸材ってのはな、必ずしも都市部だけとは限らねんだ」
亀井は得意げな顔で言った。
「はぁ……。あ、新規の説明会の申込者が来ました。沢崎大輔さん……26歳……男性ですか」
「20代後半の社会人か、珍しいな」