「そうですね。ほとんどは高校生、20前後の方ですからねー」

「まあ、でも由香よりは若いか!」

「亀井さん、年齢のことは……以前にも言いましたよね?」

由香は笑顔で振り向いた。

「す、すみませんでした」

亀井は「しまった!」と思い、その場から逃げた。

「俺から言わせると、由香のあの笑顔のほうがこえーよ」

この「if」という声優事務所は、もともと大手声優事務所「四つ葉プロダクション」のプロデューサーをしていた亀井が独立して設立した事務所である。

一緒にいるのは大島由香(28)。現在 if事務所のマネージャーということになっている。亀井とは10年ほどのつき合いだ。彼女もかつて声優として四つ葉プロダクションに所属していた。だが、8年前に引退している。

「うーん……でも私に新人の子のマネージャーなんて出来るのかな?」

由香自身も不安で一杯だった。

「でも、呼んでくれた亀井さんのためにも頑張らないと……それに……」

由香は、天井を見上げた。

「そろそろ私も時計の針を動かさないと……ね」

 

――翌月――

説明会の日がやってきた。大輔は受付を済ませ、開始10分前に説明会会場の席に着いた。

「…………」

周りにいるのは20歳前後の学生がほとんどだった。

「やっぱり場違いだったかな……」

予想はしていた。でも今さら引くわけにはいかない。そう自分に言い聞かせているとステージ上に2人の男女が現れた。

「皆さん、おはようございます。本日は声優事務所ifの説明会にご参加いただき、まことにありがとうございます。私はifマネージャーの大島と申します。本日はよろしくお願いいたします」

笑顔で由香は挨拶した。一方の亀井は不愛想な挨拶ですぐに自己紹介が終わった。

(あんな奴が事務所の社長かよ、顔こえー)

大輔の第一印象はそんな感じだった。