「私は日本生まれのアメリカ育ちで、父方にアメリカ人の血が流れています。だから、テキサス州で高校卒業まで現地の日本語学校で学び、大学を卒業してしばらくの間、いろんな職業を経験しました、そして30歳位の時にテキサスの石油プラント機械の会社で7年ほど勤務し、その後日本に帰国しましたから、私の英語は長谷川部長と異なりアメリカ南部のテキサス訛りがあります。

又、日本語も少しイントネーションに癖があります。日英商会で造船機器のライセンスによる設計を担当して、協力工場と二人三脚で市場開拓をしています」

「塚口さん、ありがとうございました。話を伺っていると塚口さんもアメリカでの生活が長くて、私が自己紹介の時に自分の長所が英語と言いましたが、先輩がおられたので恥ずかしい限りです」と頭を少しさげて、照れて見せたが長谷川部長の表情は何処か堅苦しくて塚口に対する対抗心みたいなものを前澤は感じ取っていた。

そして、長谷川は「支社長のシモンさんからは生い立ち等の個人情報などは何一つ伺っていないので、本日ここで聞くことが出来るのも、皆さんを身近に感じることが出来てうれしいです」と神妙な顔つきで言葉を挟んだ。

「次に、マリン営業部長の三村さんお願い出来ますか」

「マリン設計部長の塚口さんとは同じ造船業界で知恵を拝借しながら、新造船や修理に必要な部品や器材を英国やその他ヨーロッパの国々から調達し、先ほど塚口部長が話していたライセンスによる国内製造品の営業等、幅広く展開しています。又、この業界は古い体質に長年染まっていて、顧客との人間関係が営業面で重要視されるのが特質です。長谷川部長には時間をかけて商習慣等を説明していきたく思います」

「私の隣に座っている大木次長とは大学での先輩後輩に当たります。大木さんは私の足りない社交面をカバーして顧客との関係維持を強化してくれており、何分私がお酒を飲めない体質なので、その分大木さんが対応してくれているので安心です。以上です」

三村は話し終えると、隣の大木の方をみて笑みを浮かべた。

長谷川はマリン設計、営業共仲間意識が強く、太い鎖で繋がれているような印象を抱いたように首を上下に軽く振って見せた。一番末席の前澤から見ても長谷川部長が何かに反応しているように見えた。

 

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