【前回の記事を読む】事業部長として初めての挨拶。緊張のなか「もう少し大きな声で話してください」と野次ともとれる甲高い声が…
野望の果てに
塩見は自室に戻った長谷川に対して「すぐにお茶を入れますから」と言ってから給湯室に小走りに向かった。
ぬるめのお茶を入れて部屋に戻ると長谷川が「塩見さん、悪いけどここのホテルに電話して今週木曜日までの予約の確認をしておいてくれませんか」と一枚のメモ用紙を手渡した「はい、分かりました」とメモを持って自分のデスクに戻り、電話をした。メモに書かれたホテルは事務所からもそう遠くない地域だった。
応対に出たホテルの担当者は「失礼ですがご本人様確認をさせてください」と言うので、塩見は「長谷川明の代理の秘書の塩見と言います」と告げると先方の担当者は「長谷川様ですね。いつもご利用ありがとうございます」と急に丁寧な言葉遣いで応答した。
予約の確認を終えて受話器を置いた後、「何だ、いつもの定宿か」と一人つぶやいた。そして長谷川に「確認取れました」と告げた。
部屋から戻りかけた時、長谷川に「塩見さん、初回のマネージメント会議の事なんだが、これまではどうしていましたか」と聞かれたので、「第三月曜日の10時に開催しています。丁度前月の月次報告書が揃うタイミングです」
「そうですか」長谷川はしばらく黙り込んだ後で「火曜日の10時に変更出来ませんか、私が月曜日朝に東京へ移動してくるもんですから」
「承知しました。通達を回しておきます」
「ありがとう」
塩見は自分のデスクに戻りながら「と、いうことは月曜の午後から金曜日まで事務所に出社するということか、多分金曜日の午後は3時過ぎには退社するのかな」と推測した。