【前回記事を読む】2度目のキスは、あの夜よりも深かった…「いいですか」という彼の吐息が熱い。頷くと彼は、私の体の隅々まで優しく触れてきて…
秘密の朝
鳥の声で目が覚めた。
畳の上に敷かれた布団の中で、よし子はしばらくぼんやりしていた。体が温かい。いつもとは違う温かさだった。
隣に雅彦がいた。
白い掛け布団から覗く広い背中。規則正しい寝息。昨夜のことが一気に蘇り、よし子の顔に血が上った。
本当に、してしまったのだ。
体を起こすと、あちこちが微かに痛んだ。恥ずかしさと、それ以上の幸福感が入り混じっている。
(幸福感って、何なの。ちゃんと名前があるんだ、この感じに。幸福って言葉が、こんなにも体で分かる日が来るなんて)
窓の外はまだ薄暗いが、東の空がうっすらと明るくなり始めている。時計を見ると、4時半。旅館が動き出す5時前には自分の部屋に戻らなければ。
着替えようとした時、後ろから腕が回った。
「どこに行くんですか」
雅彦の低い声が耳元で響いた。寝起きの声はさらに深く、背筋に甘い痺れが走る。
(この声、反則だ)
「も、もう朝ですから。誰かに見られたら——」
「もう少しだけ」
後ろから抱きしめられた。雅彦の顎がよし子の肩に乗る。その体温に、よし子は力が抜けてしまった。
「よし子さん。僕は昨夜のこと、後悔していません」
「……私も」
小さな声で答えた。嘘ではなかった。罪悪感はある。正志への後ろめたさがある。でも、後悔はしていなかった。