別荘計画の中止

私のこの直観は当たった。

こうしている間に母の認知症が進行し、とても一人で犬たちの面倒を見れる状態ではなくなったのだった。

私は書面で、設計事務所にキャンセルを伝えた。

結局、1枚の図面はもちろん、契約書さえ送られてくることも、電話がかかってくることもなかった。

でも、せっかく気に入って購入した土地だったし、私たちが使わない時は貸別荘として貸し出せばいいのではないかとも考えた。

しかし、そうは問屋が卸さなかった。

なんと、私が購入した土地は、「1日単位での貸別荘が出来ない場所」だったのだ。

専門用語でいうと、建築基準法上の用途地域で「第一種低層住居専用地域」というもので、「旅館業」禁止のエリアなのだ。

1日単位での貸別荘というのは、「簡易宿泊所」というカテゴリーであり、「旅館業」許可が必要であるため、「旅館業」が可能な用途地域でないと営業することが出来ないのだった。

しかし設計に着手する前にこのことを知ったので、私は1円の損害も被らなかった。

実を言うと、設計事務所から提示された設計料は、法外な金額だった。

私が書いたプランを図面化するだけにもかかわらず、その高額な設計料には納得できなかったが、急いでいたこともあり、了承していたのだ。

だが、なぜだか、いくら待っても契約書は送られてこなかった。

考えてみたら、もし建築していたとしたら、事業として「貸別荘」を運営することは出来なかったわけで、大変なことになっていたかもしれない。

誰かが、何かが「ストップ」をかけてくれたように思った。

こうして、軽井沢別荘計画は中止になった。