YMOはさらに変化を続ける。4枚目のアルバム『増殖』の発売。これがまたファンの意表をつくものだった。
レコードは10インチのミニサイズでジャケット写真は、細野、坂本、高橋の人形が何十体も並び、アルバムタイトル通り〈増殖〉している。どれも真面目な顔で、笑顔はない。
このジャケット写真について深く言及している文献は見つからない。このアルバムについて評価するとき、ほぼすべてがレコードの内容であるスネークマンショーとのコラボについてだからである。
そこでまずこのジャケットの意味を解釈してみる。
ジャケット写真と『増殖』というタイトルから想起されるのは、ポップアートの大量生産である。これはもうメタファーというより直喩に近い解釈であろう。
ただ、その表情がシニカルなのである。ほかのミュージシャンであったなら、ヒットしたら素直に喜び、ポップアーティストであれば、大量生産こそポップアートの真髄として享受する。
しかし、YMOは大量生産されることにコンフュージョンがあったと考える。
大量生産されるのは彼らの音楽だけでなく、彼ら自身のキャラクターでもあったからだ5。
ファンによる音楽への規制、YMOのイメージの固定化である。
規制をかける巨大資本の代わりをファンが行ってしまったのである。
変わり続けるのがYMOの音楽性であり、変わらないことを願うファンの思いはそれとは相反する。
1――1979年7月にソニーより発売。直後から大人気となり品薄状態が続いた。
2――80年代前半の宝島では、中森明夫、みうらじゅん、中島らも、漫画では、しりあがり寿、いしかわじゅん、などなどの連載を掲載し、サブカル情報満載の雑誌であった。
3――サイバーパンクは高度にテクノロジーが発達した近未来を描くSF小説。ウィリアム・ギブスンが著した日本の千葉を舞台にした『ニューロマンサー』が大ヒットする。
4――B・スターリング『ミラーシェード』
5――アンディ・ウォーホルに代表されるポップアートで大量生産されるのは、マリリン・モンローやキャンベルスープなど、他者が多い(ウォーホルは自身も作品にしているが)。しかしYMOはビジュアル面でも自分たち自身の大量生産を余儀なくされた。
次回更新は4月10日(金)、20時の予定です。
【イチオシ記事】初めての夜は独特だった。「男なのに、それで満足できるの?」と聞くと、彼は不思議そうに「男だけ気持ちよくなるのは違う…」
【注目記事】夜、二人きりになった途端に抱きついてきた夫。「一日中、部下に取られていたから…早くおいで」と言って私の手を引っ張り…