【前回の記事を読む】YMOの世界的ヒットは大げさだった? 1stアルバムは全米チャートで81位。だが彼らはある〈賭け〉を行い、日本国民の心を掴んでいく
DiscI YMOバイオグラフィー
Track1. 突如出現した電子音の魔法
ワールドツアーとショービジネス
サブカルエリートの心を掴んだ音以外のもう一つの理由は〈オシャレ〉感覚である。
ドラムをセンターに据え、後ろに巨大なプログラミングシンセサイザーを鎮座させ、何台ものキーボードと何百本のケーブルを舞台に剥き出しにするステージ、
そこでクールで無機質に演奏するスタイルも〈オシャレ〉であったが、ビジュアル面でも〈オシャレ〉であった。
アルバムジャケットで3人が着ている赤い中国の人民服のようなものは、ワールドツアーで着ていたものと同じもので、高橋幸宏のデザインである。
参考にしたのは実は人民服ではなく、明治時代のスキーウェアからのものである。
中国と日本の違いなど西洋人はまだよくわかっていない時代だから、ワールドツアーでは東洋人のステレオタイプがそのまま受け止められ、最先端テクノロジー音楽とオリエンタルの融合は注目を浴びた。
ところが日本では逆に日本人が中国人の格好で海外のステージに立つこと自体が東洋人のパスティーシュである。
このアルバムジャケットでは、ワールドツアーでかぶっていなかった人民帽まで、中央のマネキンに被せてしまっている。カウンター・オリエンタリズムそのものである。
サブカルエリートたちは「日本人だか中国人だか区別のつかない欧米人に洒落で過激に表現してみました」というセンスに〈オシャレさ〉を感じ取ったのである1。