「貢!」
「沙優、帰るぞ」
「はい」
貢さんは私を選んでくれた。
ほっとしたのも束の間、今度こそ陣痛がきた。
「貢さん、お腹が痛いです」
「沙優、しっかりしろ、今、救急車を呼ぶ」
そして病院へ搬送された。
「沙優、大丈夫だからな」
私は分娩室へ入った。
私は無事に男の子を出産した。
「沙優、頑張ったな」
「貢さん、ずっと側にいてくれて感謝しています」
「当たり前だろ?」
貢さんは私の手を握ってくれた。私の頬を涙が伝った。
「沙優、キスしてもいいか、沙優の中の俺の存在はどのあたりなのか全く分からない。俺の気持ちはマックスだが、沙優にとってははじめましてからちょっと経った位置だと思う。俺を好きって思ってくれるのにはまだ時間が必要だろうが、おでこにチュッとしたキスで構わないからキスしてもいいか?」
私は頷いた。
貢さんは私の頬を両手で挟み、見つめた。貢さんの唇が私のおでこに近づいた瞬間、私の唇で貢さんの唇を塞いだ。
彼は咄嗟の出来事にびっくりした様子で、でもすぐにキスを受け入れた。しばらくお互いに甘い吐息を漏らしながらキスをした。
「沙優、俺を好きになってくれたのか」
「いいえ、違います」
「えっ」
私はまっすぐに貢さんを見つめて伝えた。
「記憶が戻ったんです。貢さんを愛しています」
「本当か」
「はい」
でも貢さんの顔から笑顔が消えた。
次回更新は3月25日(水)、22時の予定です。
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