「もっとしっかりしなくちゃといつも思うんですけど……」

「いいのよ、沙優さんはそのままで。貢にとってしっかりしてる女は好みじゃないんだから。瑠美って女、貢のそういうところ分かってて、弱い部分を見せるんだから」

「わざとってことですか?」

「そう、相当手強い女よ」

私は華菜さんの言葉に背筋が凍る思いがした。

「それじゃ、しばらく記憶が戻ったこと伏せておこう」

「はい、お願いします」

「また、来るね」

「ありがとうございます、よろしくお願いします」

華菜さんと私は記憶が戻ったことをしばらくの間、貢さんに伏せておくことにした。

貢さんは毎日病院に足を運んでくれた。

「沙優、大丈夫か?」

「貢さん、大丈夫です」

私は貢さんの手を自分のお腹にあてて「声をかけてあげてください」と貢さんに伝えた。貢さんはどうしていいか分からない様子だった。

でも恥ずかしそうに「元気に生まれてくるんだぞ」と声をかけてくれた。

私は一旦マンションへ戻る許可を貰った。貢さんは、私を心配して休暇を取ってくれた。

「動いた方がいいので、一緒に買い物へ行きます」

「大丈夫か?」

「貢さんが一緒なので安心です。頼りにしていますね」

「ああ」

貢さんはちょっと照れたような表情を見せた。

そこに瑠美さんが姿を現した。

「貢、やっぱり私はあなたがいないと生きていけない」

瑠美さんは貢さんに抱きついた。嘘、貢さんが取られちゃう。そう思った瞬間、貢さんは瑠美さんを自分から引き離し、こう言った。

「俺は沙優を愛している。俺を頼りにしてくれて、可愛くて、放っておけない沙優を愛している。瑠美は俺がいなくても大丈夫だろ。一瞬でも俺の存在を鬱陶しいと思ったお前を愛することは出来ない」