【前回の記事を読む】防衛省の西側、夜なのに明るい神社を訪れた。巫女の案内で薄暗い廊下を進むと、現れたのは…
サイコ4――人体発火
壁一面にディスプレイが取り付けられており、山口には理解できないような時間とともに変化する幾何学的な波形等が映し出されており、その下のキーボードやスイッチやレバー等を数名の研究員たちが真剣な顔で操作していた。
一番大きなディスプレイに別の場所にあると思われる巨大な冷凍庫の内部が映し出されていた。
よく見ると霜がこびりついた部屋の中央にコチコチに凍りついて固まった子供の体のようなものが放置されていた。表面に霜がびっしりとこびりついているのでそれが人間なのかどうかも判然としない。その体には壁から出ているケーブルのようなものが無数に接続されているようだった。
「あれは……」
山口が戸惑っていると、鷹山が自慢気に言った。
「あれこそが青竜、私の自慢の息子だ」
「息子?」
「河原賽子が神撰を脱走する前に、彼女の卵子を保存しておいた。それに私の精子を受精させ、代理母の子宮に移植した。臨月を迎えた時、代理母に3000万ボルトの高圧電流を流して焼き殺したが、黒焦げの煤の中から胎児は全く無事に産み落とされた。つまり彼は私と賽子による奇跡の子供だ。
だがその後の成長に問題が生じた。彼は自分の力をうまくコントロールできないのだ。周囲に存在する全ての物を加熱・発火させ、焼き尽くしてしまう。メルトダウンした原子炉と全く同じだ。
だから3He-4He希釈冷凍機で絶対零度近くに冷凍するしかなかった。それでも死んだわけではない。ただ冷凍によって脳を眠らせているだけのことだ。もし少しでも庫内の温度が上がればここだけではなく、東京全体が火の海になるだろう」
山口は思わず生唾を呑んだ。