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序 哲学的観点とホルミシス効果
ホルミシスとは何か
バイオスフィア2は、3.14エーカー(約1.27ヘクタール)の面積に、熱帯雨林、サバンナ、海岸線、沼地、農地、都市地域などの様々な環境を模擬していた。
だが、そこでは多くの樹木も植えられたがその大半は枯れてしまったという。巨大な温室で恵まれた環境のおかげで木は急速に成長したのだが、実験が終わらないうちに多くが枯れてしまったという。
ここでのポイントは欠けていたのは栄養や世話ではなくストレスだったということである。このケースではそれは風である。風が吹かないと木が枯れてしまうのだ。風というのは木にとっては脅威だが、それに対抗しようとして木は自らを太くし、大地に深く根を生やそうとするのだ。つまりストレスが生物を強くしているのだ。
予防接種はホルミシス効果の典型例である。人体の免疫組織も微生物と戦うために生じた。だから身の回りをあまりに清潔にし過ぎることで免疫組織の活動を不活発にさせて逆に自己免疫疾患などを引き起こすことにもなりかねない。
物質の場合でも似たようなことがある。例えば刀剣の製造過程で鍛造というのがあるが、高温や鍛錬という外からのストレスによって鉄は反応してより強度を増す。ホルミシス効果は生物学的概念であるが、物と生物を区別しなければ似たような現象であるとみなせる。
実は物理現象においてはホルミシス効果というべきものがあふれている。後で詳しく述べるが、応力、摩擦、作用反作用における力の発現のことである。つまりある物が外力を受けることで内部の力を発揮するようになるという現象である。
ここでホルミシス効果が自己組織化を促進する強力な力を持つことを納得するために、二つ具体例を挙げてみる。
細胞が一時的な高温ストレスにさらされると、ヒートショックプロテイン、つまり熱ショックタンパク質(HSP)が生成され、細胞内のタンパク質の誤った折り畳みを防ぐ役割を果たす。これは細胞のストレス応答機構の一部であり、一定のストレスによって細胞が自らを保護し、秩序を再編成するプロセスである。
これは適度なストレスが、細胞レベルで自己防御のためのタンパク質生成を促し、自己組織化を強化する典型例だ。
マクロなケースでいうと、森林火災は一見破壊的だが、適度な火災は新しい種の発芽を促したり、土壌の栄養を豊かにしたりして、森林が再生する機会を与える。これもホルミシス効果と考えられ、火災というストレスにより、森林の自己組織化と再生が促される。
ホルミシスというのは生にとって危機を意味するのと同時になくてはならない働きを示すものだ。わかりやすい例で言えば、酸素のようなものだろう。酸素は生物にとり危険であると同時に必要不可欠のものである。ホルミシスは自然治癒力の本質であると同時に生命発生の根本をなしているようだ。