【前回の記事を読む】「酒飲んでたら、ベッドで元カノを抱きしめた格好で目が覚めた」妻を愛しているのに…元カノを放っておけなかった
第九章 愛されていない私
沙優は肩を小刻みに震わせていた。俺は思わず沙優を後ろから抱きしめた。沙優は肩を震わせて泣いていた。俺は沙優を俺の方に振り向かせた。沙優の目から涙が溢れて頬を伝った。そして、俺に抱きついて呟いた。
「大丈夫です、私は貢さんの奥さんで、貢さんの赤ちゃんも授かって、これ以上望んだらバチがあたります」
「沙優」
「ごめんなさい。疲れたので休ませてください」
沙優は自分の部屋に入っていった。そしてその日は部屋から出てこなかった。
次の日の朝も顔を合わすことはなかった。俺は自分の気持ちと行動をはっきりさせなくてはと心に決めた。瑠美に対して、放っておけない気持ちになったのは揺るぎない事実だ。
しかし、抱きたいと思うほど愛おしさが溢れたのかというと、それはないと断言出来る。ならば、いくら酔って覚えていないからと、酔った勢いで瑠美を抱くだろうか。俺は自分の気持ちをはっきりさせるまでホテルで生活をすると決めた。そして沙優に自分の気持ちを打ち明けた。
「沙優、ごめん。しばらくホテルから仕事に行こうかと思っている」
沙優はしばらく考え込んでいた。
「自分の気持ちがよく分からないんだ」
「分かりました、私はどうすればいいですか」
「許されるなら、俺の気持ちがはっきりするまで待ってほしい」
沙優は頷いた。
俺は部屋でスーツケースに荷物を詰めた。そして玄関に向かった。その時、思いもよらぬ出来事に俺は戸惑った。俺の背中から手を回し、沙優は俺を抱きしめて、叫んだ。