俺は仮眠を取り、会社に向かった。何が起きたと言うんだ。瑠美と酒を飲み、相談に乗るとホテルに行ったのが間違いのもとだった。
俺としたことがなんたる失態だ。俺は瑠美を抱いたのか。いくら酒に酔っていたとはいえ、まさか覚えていないなんてことはないだろう。待てよ、俺は酒に酔って沙優を抱こうとしたことを覚えていなかった。
あ〜あ、瑠美を抱いたことを覚えていないって、ありうると背筋が凍る思いがした。沙優、俺は沙優に何も言ってないよな。朝帰りして、沙優は何も聞いてこなかった。
やばい、また俺のもとを去るなんてないよな。俺は急に心配になった。
「社長、聞いてくださってますでしょうか」
「えっ、あ、すまん、考えごとをしていた」
「大丈夫ですか」
「悪いが、ちょっと出かけてくる」
「かしこまりました」
俺は沙優の待つマンションへ向かった。
「沙優、沙優」
「貢さん」
俺は沙優の姿を確認し、引き寄せて抱きしめた。
「貢さん、どうされたのですか、お仕事は?」
俺は沙優の頬を両手で挟み、キスをしようとした。あと、数センチの距離に近づいた時、瑠美を抱きしめていた俺が、「沙優を裏切っておいてキス出来るのかよ」とニヤッと不敵な笑みを浮かべた。俺はハッとして沙優から離れた。
「沙優、ごめん」
沙優は俺をまっすぐ見て言葉を発した。
「貢さん、そのごめんは何に対してのごめんですか」
俺はいろんなことがフラッシュバックして自分でも分からなくなっていた。沙優は部屋の時計を見た。
「貢さん、お仕事は大丈夫ですか」
沙優にそう言われて我に返った。
「仕事に戻るな」
俺はドアのノブに手をかけた時、俺の背中に沙優の頬が触れたのを感じた。俺の心臓がうるさいぐらいにバクバク音を立てた。俺は振り向かずにマンションを後にした。
次回更新は3月17日(火)、22時の予定です。
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