休みの日は取引先との接待でほとんどうちにいない。貢さんを信じて付いて行こうと決めたのに、不安は拭い去る事が出来なかった。
華菜さんは愛されている実感がなかったと言っていた。私だって同じだよ。一人だけ本気で愛した女性がいたと華菜さんは言っていた。今でもその女性を愛しているのかな、やっぱり私は拾われた子犬なの?
第八章 忍び寄る罠
ある日、会社に来客があった。俺が華菜と付き合う前に付き合っていた瑠美だった。
「貢、久しぶり、元気だった?」
「瑠美、どうしたんだ」
瑠美とは三年前、瑠美から別れを切り出されて別れた。瑠美から言い寄ってきたにもかかわらず、俺の冷たさに離れて行った。
俺は寂しさも虚しさも感じなかった。来る者は拒まず、去る者は追わずの考えで、今まで生きてきた。別れてから三年も経つのに、今更なんだと言うんだ。
「結婚おめでとう、それから奥様妊娠したのね、貢が父親だなんて、急に懐かしくなってきちゃった」
「今更何も話すことはないだろう」
「う〜ん」
いつも明るい瑠美の表情が暗いのが気になった。
「何か心配事か」
「うん、ちょっと相談したいことがあって……」
捨てられた子犬のような態度に以前の瑠美に対する気持ちが走馬灯のように蘇った。俺は相談を聞くくらいならいいだろうと軽く考えていた。
「それじゃあ、仕事が終わったら、話を聞くよ」
次回更新は3月16日(月)、22時の予定です。
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