メールの丁寧さからも雪野さんの性格が伝わる。なんて悠長に思ったけどそうじゃない。読み終わってから気づいたが、休日に女の子と出かけるなんて初めてだ。オープンキャンパスだとはいってもこれは人生初のデートなんじゃないか?
しかもご家族の方に送ってもらうなんて、どう思われるだろう。大事な孫娘が会ったこともない男と二人で出かけるなんて心配をかけてしまうに違いない。二つ返事で行くと言ってしまったが、本当によかったのか突然不安が押し寄せてくる。
かといって、雪野さんも一人で行くのは不安だと言っていたから、今更断るのも申し訳ない。ここはとりあえず雪野さん本人に聞いてみるしかない……よな。
送信者:黒田透
件 名:Re;こんばんは
本 文:連絡ありがとう。
待ち合わせはメールの通りで大丈夫です。
でも、送ってもらうのはご迷惑じゃないかな? 雪野さんのご家族は僕と二人で行くこと心配じゃないかな?
送信して一分もしないうちに通知音が鳴って驚く。メールを開くと先ほどよりもシンプルな文章が書かれている。
送信者:雪野雫
件 名:Re;こんばんは
本 文:大丈夫だよ! おじいちゃんもぜひ黒田くんに会ってみたいって。
楽しみにされると余計に緊張してしまう。でも文面から迷惑ではないことだけは伝わった。雪野さんは家でおじいちゃんやおばあちゃんに僕の話をしたりするんだろうか。僕のことを知っているのなら安心だけど、どんなことを話しているんだろう。気になってこの日はなかなか寝つけなかった。
約束の日、待たせてはいけないと思い、少し早めに家を出て、十五分前には約束した校門前に着いた。失礼がないよう普段は着ないかっちりしたジャケットに身を包み、お母さんから持たされた焼き菓子の入った紙袋を左手に下げて彼女の到着を待つ。もう夏も終わったというのに、緊張で手のひらが少し汗ばんでいる。
次回更新は3月17日(火)、20時の予定です。
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