【前回の記事を読む】無神経なことを言ってしまったので、男2人で謝りに行くと、彼女はつーっと涙を流し…
第五章「居場所」
放課後の情報室で大学のホームページを調べてみるが、どこも魅力的に見えるしどうやって決めればいいのか基準がわからない。一時間ほど頭を悩ませていたところ、ドアが開く音が後ろの方から聞こえた。
「あ、黒田くん!」僕の方に雪野さんが駆け寄ってくる。僕を探してここに来た様子だ。
「雪野さん、どうしたの?」
「黒田くん、都内の大学に行くって言っていたよね。もうどこにするか決めちゃった?」
「ううん、全然決まらなくて今ちょうど調べていたところ」
「そっか! よかった」
そう言って隣の席に座り、僕が見ていたパソコンの画面を覗き込む。
「あ! ここの大学なんだけど、興味ある?」
期待した瞳で彼女は僕の方を見る。
「うん、なんとなく経済学部がいいかなとは思ってて。ここなら家からもそんなに遠くないし、就職実績でも知っている名前の会社が多いみたいなんだ」
ほら、とさっきまで見ていたページを開いて見せると興味深そうにまじまじと見ている。そして僕の方を再び見て彼女は言う。
「あのね、今週末にこの大学でオープンキャンパスがあるの。私、ここの文学部が第一志望だから行ってみたいんだけど一人だとちょっと心細くて。もし黒田くんが興味があるようだったら一緒に行かない?」
「大学の見学ができるの?」
「うん、学部紹介と在校生との座談会があって、そのあとは体験授業にも参加できるんだって」
大学生活のイメージが全く持てなかった僕にとって、すごく魅力的なお誘いだ。実際に大学に行って、そこで学ぶ学生と会ったら自分のやりたいことが見つかるかもしれない。
「行く! 行ってみたい」
「やった! じゃあ待ち合わせの時間と場所は今晩メールするね」
「ありがとう。どうしたらいいか悩んでいたからすごく助かったよ」
じゃあまたね、と手を振る彼女を見送って、僕も荷物をまとめて帰路につく。オープンキャンパスというものがあるのか。僕は情報収集が足りていなかったなとちょっとだけ反省しつつも、気持ちがだいぶ軽くなった。
その夜、風呂上がりに部屋に戻ると携帯電話にメールの通知があった。ベッドに横になってメールを開くと雪野さんからだった。
送信者:雪野雫
件 名:こんばんは
本 文:黒田くん、こんばんは。今日話したオープンキャンパスの待ち合わせなんだけど、土曜日の十時半に高校の校門前でもいいかな?
帰りは電車になるけど、朝はおじいちゃんが車で送ってくれるって! 持ちものは筆記用具だけでいいみたい。
返信待ってます。