【前回記事を読む】「チワワ」の趣味は睡眠で、「柴犬」の趣味は…お祈り?! 愛犬の2匹の正体は…
2章 共同生活者たち
営業所に戻り退勤の準備を終えると、その足で通用口から裏の路地に向かう。
そして、あたりを見回し誰もいないことを確認すると、黒縁のメガネを外し、フレームをたたんで呼びかけた。
「グッキー姿を見せろ」
そのメガネは翔太の手の平からぴょんと飛び跳ね、宙を三回転ほどしてボンと小さな音を立てて茶色の柴犬になると、二本の前足を宙に投げ出し放物線を描き降下した。
次に翔太の髪の中から米粒ほどの小さな物体が宙に向かい飛び出すと、微音を発したガッキー君もチワワになってグッキー君を追って降下した。
着地した二匹はワンワンと大きな声を上げてそれぞれの速さで駆け回っている。
小さなガッキー君はでんと構えゆったりとした走りを見せるグッキー君に体当たりしたり背中に飛び乗ったりしながら進んだ。
翔太は微笑みを浮かべてその光景をずっと眺めている。
やがて、ハッハッと息を切らした二匹は澄み切った瞳で整列し、翔太に向かい口角を上げた。
「家に帰ろう」そう言って翔太はパートナー二匹を連れてマイ・タクシーに戻り、『回送中』の表示を車内に立て、ハンドルを握った。
国道を進み脇道に逸れると瀟洒な佇まいの戸建住宅が並んでいる。
さらに進むと車道は狭くなり、両側に田んぼと畑の風景が現れた。カエルの合唱が元気良く聞こえている。突き当りにある屋根付きの駐車場に到着した。
この駐車場は翔太の住むアパートの前方にあり、オーナーさんが建物と一緒に経営している。
夕闇が周辺を覆い始めている。