【前回の記事を読む】彼の耳元で「また、連絡して」と囁く女性…モデルだというその女性は、“婚約者”である私の目の前で彼の腕に手を絡ませ…
第七章 妊娠
そんなある日、沙優が体調を崩した。
「沙優、大丈夫か」
「大丈夫です、すみません、ご心配をおかけして」
「何もしなくていいからゆっくり休んでいろ」
「はい」
この時沙優が俺の子供を妊娠していたなどと知る由もなかった。沙優は生理が遅れていることで、もしやと感じていた。
それからしばらくして、沙優から思いもよらぬ言葉を聞くことになった。
「南條さん、あのう、赤ちゃんが出来たみたいなんです」
俺は沙優の言葉に驚きを隠せなかった。
「本当か、病院は行ったのか」
「これからです」
「一緒に行こう。やったな、沙優」
しかし、沙優の表情に笑顔はなかった。
「南條さん。赤ちゃん、堕(おろ)します」
「何言ってるんだ。神様からの授かりものだぞ」
沙優は目に涙を浮かべて俯いた時、溢れていた涙がこぼれ落ちた。
「私、一人じゃ育てられません」
「俺がいるだろう。沙優を一人にしないよ」
「でも……」
「沙優、俺達が巡り合ったこと、そして子供を授かったこと、全て運命だと思わないか。俺はずっと沙優の側にいる運命だから、神様が子供を授けてくれたと思うんだ」
沙優は俺をじっと見つめた。