プロローグ
音(ね)の常春(とこはる)の桜の頃 心祈るは夫(つま)待つ春の色 心この楽(らく)さ乗るは琴の音
「なあに、これ」
「いいから、読んでみて」
「ねの…とこはるの…さくらのころ…こころいのるは…つままつ…はるのいろ…こころ…このらくさ…のるは…ことのね――でいいの?」
「そう、よく読めたわね」
「和歌か何かのようだけど、五七五七七にはなっていないから違うのかな」
「やっぱり、変かしら?」
「うん、特に初めの〈音の〉なんか枕詞風だけど、そんな枕詞はないはずだし、全体に日本語としておかしくて、意味がよく分からない」
「そう、それなら、今度は逆から読んでみて」
「ね…の…と…こ…は…る…の…さ…く…ら…の…こ…ろ…、あっ!」
「ね、分かった?」
「回文(かいぶん)ね、そうでしょう?」
「そう、〈シンブンシ〉や〈タケヤブヤケタ〉と同じよ」