悲しみの底で見つけたもの~猫さんが生きた八十九日間の記録

それは、もっと先の話だと思っていた。

我が家の猫さん、顔の上半分から背中にかけては金色に輝くような茶色、顔の下半分からお腹、脚先にかけては真珠のような色、いずれも長いビロードのような毛に覆われている女の子で九歳になるのだが、二〇二四年秋の健診でも血尿が出ていて多少気には留めていた。

以前の尿検査でも血尿はあり、こんな可愛らしい猫さんにも弱点はあるのだなと苦笑しつつ、健診先であるかかりつけの先生に相談していた。

「単純性膀胱炎ですね。トイレを清潔にして様子を見ましょう」

物腰の柔らかい院長からはそうアドバイスを受けていたが、あまり深刻に捉えず、水を沢山飲ませていればそのうち良くなるだろうと、タカを括っていた。

猫さんは、ノルウェージャンフォレストキャットという品種で、体に密生した二重の美しい長毛と、がっしりした筋肉に覆われた大型の猫である。動きは俊敏とは言えないが力強さがあり、ゆったりと腰を振った歩く様子は、雪と森の世界の女王を彷彿とさせる。

そんな猫さんだから、食欲は旺盛だった。体を触って肋骨を触れられれば肥満じゃないという本に従って食事制限を緩めにしていたせいか、5.6kgになった時に健診で肥満判定をされ、7歳でカロリーカットに踏み切った。

一日191キロカロリーの食事制限を続け、二年近くかけて体型は標準になり、体重も4.7kgで安定していた。このころはダイエットが成功して良かったと無邪気に喜んでいたものだ。

二〇二四年の暮れから年末にかけて、猫さんがあまり動かないような気がしていた。元気は元気なのだが、どうも私の部屋のスツールで横になっている時間が長い。

ちょっとは運動しないと代謝が下がってまた太るなあ、でもあまり遊ばない猫だから運動させるのも大変だ。そんな風に考えていた。

二〇二五年一月三十一日(金)の深夜、この月のシャンプーはまだだったと焦っていた。長毛種は月に一度シャンプーをする事が推奨されている。毛量を減らさないと、毛玉を飲み込み、そこから毛球症が生じる恐れがあるのだ。

飲み込んだ毛玉が消化管に入ると腸閉塞になりかねない。それを恐れていたので、シャンプーは彼女が家に来てからずっと続けている習慣だった。