「結論から言おう。前々から仮説に上がっている通り、我々がかなり古い時代にタイムスリップしているのは、これはもう間違いない――ということが判明した」

一同どよめいた。

「かねてから冗談みたいに言ってきたから信じられないかもしれないが、今度は真実だ。もう仮説じゃない。

事実であると判断するに至った過程を説明しよう。まず我々は、これまでに、キャンプ場周辺の植生がまるっきり変化している事実、道路が不自然に寸断されている事実に直面した。さらにここ最近、男子の一部で探検隊を組織し近隣を調査したが、この途中にも、植生や、地図と実地の違いを無数に発見した。

ぼくはこれらの事実を、観光案内所にある様々な書籍――ここには地域の草花や地形についてのかなり詳しい資料が取り揃えられている――それと、ノートパソコンに収められていた論文等と比較した。

その結果、我々はまず間違いなく現代ではない時代にいることが、明らかになった」

「質問!」
手を挙げたのは川田だった。彼はいくらか気が立っている風だった。

「現代でないなら、一体何時代にいるってんですか? 噂の通り原始時代ですか? 恐竜ですか? 氷河期ですか? ただ『現代ではない』って言われてもピンときません」

「きみの言うことはもっともだ。実はそこがはっきりしなかったから、ぼくらもいつまでも仮説の域を出られなかったんだよ」

沼田は傍らの砂川を促し
「今からきちんとした説明を砂川君の口から伝えてもらう――彼は殊に歴史に詳しいからね。じゃ、頼む」

沼田が腰を下ろし、砂川が立ち上がった。彼の手には例のハート形土偶があった。

「みんな、今日この土人形を観光案内所の前で見たと思うけど、実はこの人形のおかげで我々のいる時代がはっきりしたんだ。我々のいる時代は、およそ紀元前二千五百年。現代から四千五百年も昔で、縄文時代後期にあたる。土偶は古墳時代より古く、主に縄文時代に作られた。この土偶の雰囲気……まだ新しい。出来立てと言っていい。まさに縄文時代の仕上がりだ」