Chapter3 定住への道
キャンプ場の北側は山岳地帯で、はるかに本白根山が見える。すぐそばはなだらかな丘陵で日当たりがよく、耕作に適している。泉は男子に斜面の草木を刈り取ってもらい、女子を率いて畑づくりを開始した。女子たちは真っ黒になって働いた。女子は、不安に苛まれた際の取り乱しようは大きかったが、同じくらい適応力も大きかった。
ある日、女子が総出で畑を作っていると、仲良し三人組が畑と森を分ける藪の向こうにきれいな花を見つけ、それを摘みに奥へ踏み込んでいった。その藪は、大学生が「決して行ってはいけない」と注意したラインの向こうだった。
花はまるで誘うように奥へ奥へ点々と咲いていた。彼女たちはどんどん進み、あっという間に畑から十数メートル離れてしまった。ふと顔を上げると、あたりは茂りに茂った森。どこを見ても同じ景色で、たちまち右も左も分からなくなった。
さて、畑で作業を監督していた木崎茜は、ざっと見渡して人数が三人足りないことに気付いた。勘のいい彼女はすぐに足跡を見つけ、藪へ顔を突っこみ、目を凝らした。しばらく見ていると草木が動いた。見覚えのあるカチューシャがちらりと映った。
「あんたら、戻ってきなさい!」
女子三人組は半べそで戻ってきた。手も足も枝葉にかすれて擦り傷だらけだ。
「藪の奥に行っちゃダメっていつも言われているでしょ! イノシシがいたり、毒虫がいたり、何かあったらどうすんのよ!」
「ごめんなさい」
三人は小さくなって頭を下げた。
「気がついたら右も左も同じ風景に見えて……茜ちゃんの声のおかげで、自分たちの来た方向が分かったの」
「ったく。勘弁してよ。アタシが泉さんに怒られるんだからね」
木崎は腰に両手を当て、荒っぽく息をついた。
ふと、中学生の一人が妙な土色の塊を持っているのを見た。
「それ何?」
「拾ったの」女子はおずおずと塊を差し出した。