「うわぁ、先生!」
その甲高い声に「何や?」と先生が反応。「先生の背中、真っ白になって汚れてます」「ほんま? なんでやろ?」「多分、黒板の白チョークがついたんです。黒のスーツやのに。ちょっと脱いでください。払いますわ」「いや、ええよ。自分で払うから。それより盛り上がってきたし、はよ、文化際の出しもん決めよや。委員長仕切って」「ほんまにいいんですか? 先生」「かめへん、かめへん」
ピピィィィィィィィ!!!
―『かめへん、かめへん』発動にてゲーム終了。
あっさりと革命を起こしたのは、まさかの委員長の美樹であった。
少しの間があって。僕ら四人は大爆笑した。マコトも、タケも、小林も、僕も。体をくの字に折りたたんで笑った。田中先生の革命フレーズに、腹を抱えてゲラゲラと笑い転げる僕たち四人。腹がよじれるほどに痛すぎて、何も言葉を繰り出せないくらいの大爆笑。
―なぜに、あれほどまでに笑ったの?―
後から聞かれたって、何のどの部分が面白くて、あんなに大爆笑できたのか論理的に説明することなんてできない。おそらく自分たちのイメージしていた展開が心地よく裏切られて、異なる角度で物事がさらりと終結したことや、ラーメンごときで一生懸命阿呆な企画に全力で取り組んでいた熱や、オンボロ校舎から出ている古臭い空気だとか、この時の緊張だとか緩和だとか、放送チャイムの音が今日はなんだか胸に響いたことや、夕刻という再び腹時計が鳴り響く時間帯だったこととか、雲ひとつない突き抜けるような青空だったことや、諸々。
物質的なこと、精神的なこと、時間的なこと、空間的なこと、様々な事象が複雑に絡み合って丁度良いスイートスポットに着地したから、腹がよじれるぐらいに僕たち四人は笑ったんだと思う。
そういう意味においては、複雑に絡み合って醸成されたその時間や空間は、再現性の無いある種の奇跡と言えるのかもしれない。メイドイン尼崎な僕らの青春の日々は、いつだってそんな他愛の無い奇跡と共に抱き合わせで存在していたのだ。
試し読み連載は今回で最終回です。ご愛読ありがとうございました。
👉『尼崎ストロベリー[注目連載ピックアップ]』連載記事一覧はこちら
【イチオシ記事】元カノに触った手で触れられるのが嫌で、夫の手を振り払ってしまった。帰宅後、ドアを閉めると同時に激しくキスされ…
【注目記事】彼女から自殺をほのめかすメールが毎日のように届いたが、ただの脅しだと思い無視し続けてしまった。その結果、大学の卒業式当日に…