卒業式
それは、私が最後に勤めた中学校での卒業式のことだった。その学校は、私にとって二十年ぶりの二度目の勤務だった。
私はその年すでに退職の決断をしており、この卒業式が、私が同席する最後の卒業式となった。その保護者席に彼女はいた。
二十年前にその中学校の男女両方のテニス部の監督を務めた際、女子部の部長をしてもらった生徒である。
難しい年頃であるのにもかかわらず、生真面目な性格で、集団をまとめるのに苦労しつつ、自分の技術の伸長にも熱心だった。私の指導にもよくついてきてくれた。
そんな彼女が、この卒業式の保護者席に座るという。聞けば、シングルマザーとして懸命に働きながら子育てに努めているということだった。
その娘は学校を欠席しがちで、決して模範的な生徒ではなかったが、私が話をした感触では思いやりのある心の温かい女生徒だった。
卒業式が始まる直前に、私は保護者席の片隅に彼女を見つけ、声をかけようと近づいて行った。
彼女は、すぐに私に気づき、にこにこしながら椅子から立ち上がった。
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