卒業式

それは、私が最後に勤めた中学校での卒業式のことだった。その学校は、私にとって二十年ぶりの二度目の勤務だった。

私はその年すでに退職の決断をしており、この卒業式が、私が同席する最後の卒業式となった。その保護者席に彼女はいた。

二十年前にその中学校の男女両方のテニス部の監督を務めた際、女子部の部長をしてもらった生徒である。

難しい年頃であるのにもかかわらず、生真面目な性格で、集団をまとめるのに苦労しつつ、自分の技術の伸長にも熱心だった。私の指導にもよくついてきてくれた。

そんな彼女が、この卒業式の保護者席に座るという。聞けば、シングルマザーとして懸命に働きながら子育てに努めているということだった。

その娘は学校を欠席しがちで、決して模範的な生徒ではなかったが、私が話をした感触では思いやりのある心の温かい女生徒だった。

卒業式が始まる直前に、私は保護者席の片隅に彼女を見つけ、声をかけようと近づいて行った。

彼女は、すぐに私に気づき、にこにこしながら椅子から立ち上がった。

 

👉『夕日可愛』連載記事一覧はこちら

【イチオシ記事】40代半ば、自分が女であることを忘れて10年以上。デートや恋がしたくて、ネットで出会い系や交際クラブを探してみることにした

【注目記事】マッチングアプリで出会った男に騙され監禁。そこには複数の女性がいて、上の階からは「お願い、殺さないで」と懇願する声が…