第二章 桜
そして話は冒頭に戻る。物語は恵理がJR浜松町駅界隈にいるところからのリスタートになる。まだ午前中だが、何しろ修学旅行で「千葉県にあるテーマパーク」には行ったことはあるが、バスの旅行だったため、東京に今いることが不安だった。何しろビルが高い。目にうつる人工構築物の大きさに圧倒される。
「あ、東京タワーだ。テレビでしか見たことがない東京のシンボルだ」
その高さでは、2012年に完成して、恵理が去年修学旅行で上った東京スカイツリーにその座を譲ったが、あの美しい形状は、現在でも東京のシンボルとして存在感はいささかも変わらないといってよく、東京タワーこそ、ビッグシティイズナンバーワンであり続けると思っている。その美しさに恵理はテンションマックスに達した。
「この大都会東京で生きていくんだ」恵理はいつまでも東京タワーを見ていた。
さあ、東京に来た感慨をひとしきり味わった後、スマホで本日の宿泊先を決めた。浜松町駅近くのビジネスホテルだ。まず、泊まるところが決まり一息ついた。
その後、昨日、恩師からもらった名刺を取り出した。株式会社ダイシン広告社とある。名前は北崎保である。恵理にとって名刺は初めて見たものなので、何だか嬉しかった。とにかく会社に電話した。
「もしもし、小川といいますが、北崎さんいらっしゃいますか?」初めて会社というところに電話したので心臓バクバクだ。株式会社ダイシン広告社の事務の女性が電話に出た。
「北崎ただいま外出しております。ご用件をお伝えしましょうか?」
「あ、いいです」電話に出た女性事務員のいかにも慣れた応対に押され気味だったので思わず電話を切った。
「会社ってすごいな。電話に出た女の人カッコイイ!」と感激した。何だか少し社会人の仲間入りができたような気がした。
北崎が今、会社にいないことはわかった。
夢の東京に来た。つてを頼って来たんじゃない。頼りになるかどうかわからないが、全幅の信頼を寄せる野口の親友という男性だ。会ったこともないのに何か運命的なものを感じたので、名刺に書かれた携帯の電話番号に電話してみた。
「もしもし、北崎と申しますがどちら様ですか?」
「もしもし、小川といいます」あの会社員独特のような事務的な話し方に少し声が裏返った。
「あ、小川さん! 野口から聞いてますよ」と突然、親し気な話し方になったので気持ちが楽になった。
「あ、本当ですか。野口さんからですか。良かった~」
「今、営業で出先なんですよ。18時にはいったん会社に帰るので、18時30分に渋谷駅前のハチ公前ってわかるかな?」
「テレビで見たことがあります。渋谷のスクランブル交差点もテレビで見たことがあります」
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