「フェンシングに関心はありませんか?」
学生時代のように「面白そうだな」と思う一方、日本でも小柄な部類に属する自分がフランスでフェンシングをする姿など、現実的ではない。
「フェンシングは、他の多くのスポーツ同様手足が長く、背も高い人のほうが有利でしょう。私には向かないのではありませんか?」彼は笑顔で言った。
「あなたが小さいということは、相手は相対的に小さな敵に対峙しなければならない。でもあなたは反対、相手は相対的に大きな的を提供してくれるのだから、小さいことは決して不利でもなく、大きいことが有利でもない。それがフェンシングですよ」
ウェアや道具一式を貸すから、試しに一度体験してみたらどうか。その言葉に導かれるように、クラブ「ストラスブール・エスクリーム」へ足を運んだ。
広い室内施設には、合計22本の審判器付きアルミ・ピストが常設され、トップ選手ばかりでなく、子どもや年齢を重ねた老人まで幅広い層の人々がフェンシングを楽しんでいた。車いすフェンシングの選手も同じ場所で練習し、すべてにおいて分け隔てがない。
初心者ならばエペのほうがわかりやすいから、とエペを体験し、興味を持った和田はすぐにクラブへ入会。仕事を終えた夜8時から9時半までの練習時間を活用して腕を磨き、地元の公式試合にも出場するようになった。
「いい意味でかしこまることなく、開放的。練習でも相手を定めることなくローテーションでグルグル回るので、全員が老若男女誰とでも更に車いすフェンシングも一緒に対戦するんです。フェンシングは身体の接触を伴わない格闘技なのでそれが可能でまたごく当たり前。
審判も老若男女が入り交じり、女性の審判員はハイヒールでピストに立ったり車いすのアフリカ系男性が健常者の審判をしたり、日本では考えられないぐらいとにかく自由(笑)。私もフランスフェンシング連盟登録だったので、“FRA”のゼッケンをつけて試合に出た。楽しかったですよ」
スポーツとしてのフェンシング発祥の地フランスにはストラスブールだけでなく、さまざまな街に少なくとも1つは必ず同様のフェンシングクラブがある。フェンシングの普及や、後に世界のトップ選手を輩出する環境としても抜群。
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