このフロアは病院の六階。割れた窓ガラスの破片に切創され転落か。

窓ガラスの向こうで手招いているのは、病気と借金に苦しむ貧困親子のあっけない転落死か。

どうせ死ぬなら、オカンと一緒に。それもまたよしか。

さりとて、車椅子ごと空へ飛んでいけないかなぁ。

いつの日か、オカンと観た映画みたいに。

宇宙人と少年が自転車で満月へと飛び立っていくヤツだ。

さぁ、オカンと笑いながら空へ旅立とう。

そして、オカンと月を目指そうか。

そして、月の裏側に隠れてオカンと二人で暮らそう。

もちろんウサギとも共存していく。

餅つきも手伝う。

バニーガールも嫌いじゃない。

そして、たくさんたくさんオカンと話をしたい。

もっと、オカンの笑顔がみたい。笑い声を聞きたい。

僕たちには時間がない。

だから。お願いします。

この笑いの魔法が解けてしまわぬように。

このまま。車椅子ごと、月へ向かって飛び立ってしまいたい。

お願いします。

何でもしますから、どうかお願いします。

オカンともう少しだけ生きたいのです。

僕の願いを。僕の祈りを。

どうかどうか聞いてください。お願いします。

どうか、どうか、お願いします。

おてんとさま。

次回更新は3月13日(金)、14時の予定です。

 

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