「それどころじゃないわもう。こっちは慌てとるんやで、二世だか三世だかアイドンノウやけどほんま、あんなんただの子供やないか、あかんあれ日本語わかるんやったっけ?」
空いたソファに深々と腰を下ろした少年のほうを向いてヒカルはおどけた表情を浮かべる。丸刈りの頭に複雑な縞模様をあしらい、ケシを自家栽培していると語っていた日系二世の彼は、州内で五本の指に入るスシ・バーチェーンのオーナーの息子で、細いジョイントをくゆらせながら銀紙の舞い落ちる光景をばかばかしそうに眺めている。
強いアルコールと、曲のリズムに乗せて組まれた片足首が上下に揺すられているせいで、そこに描かれたタトゥーの絵柄を識別することはできない。不意に彼は妙な柄の紙飛行機を小さく折って、ラウンドテーブルの上に放った。
「エル・エス・ディ、オライ?」
「フォーユー、フォーユー」
彼はトーンの低い小声でそうつぶやき、トライトライと腕でジェスチャーしてみせる。
「うるせえぞデブ、いまは不法滞在がトレンドなの知らねえのかブタども。そもそも今日は俺の誕生会じゃなかったのかよ。たんに俺がメシ振る舞いに来ただけじゃねえかったく」
ファンクミュージックの音の向こうで女性の喘ぐ声に気づいたが音楽と同調して違和感を感じないしもしかしたらそういう音楽なのかもしれないと思う。
顔面が吹き出物だらけの女にシリンジをまわされて、僕はそれを断りラッパ状に丸めた一ドル紙幣でマサの粉を吸った。細い誰かの足が頭上を跨いでいき、濡れて尖った何かが額をかすめる。
「一体何なんダイスケ、自分のステータス棚に上げてほんまあったまくる、あんた自分だけグリーンカードやろがぼうけ」