「ババアだと思ってさ、みんなして言いたいこと言うじゃないの、私怒ってるんだ」
ほんとにそうだ、耳にしたところじゃ私が男ウケを狙っている仕草とか、服装とかを意識している、男性に注目を浴びて喜ぶタイプだと分析した輩がいるというじゃないの。
そんなことしてない。かわいいソックスを履くと「かわいい」と喜んでくれる利用者さんがいる。小さなピアスをしていると「私もイヤリングしたいな」という利用者さんがいる。
洋服に至っては自分がいいな、と思ったトレーナーとかシャツ、利用者さんに会って失礼じゃないと思われるズボンを履いているだけだし。長い髪の毛をひとつに束ねているのは、食事なんかに髪の毛が入らないようにするためだ。
化粧はどんなにでもできるけど、柔和な感じにしている。そのほうが話しかけやすいから。全部、理由がある。仕草は分からないけど、椅子に座った時、足は必ず膝と膝をくっつけるくらいはしている。最低限のマナーを守っていたと思っていたのに。なんでみんなしてそんな風に見るの。
「たっちゃんはさ、ズルいよ。毎日私に、そんなことばっかり言ってさ、私だって誰かの膝にでも崩れ落ちて泣きたいときいっぱいあるんだよ。そんな風にまっすぐ自分の気持ちぶつけてきて、毎日だよ。私だってたっちゃんに絡めとられてさ、優しくしてもらいたくなっちゃうよ、やっと私だって立ってるんだよ」
ちきしょう、悔しい。女に生まれて悔しいよ。男だったら男同士の話できたのに。男性職員が拓也さんの話聞けよ。とくと聞いてやれよ。そんな風に考えて、帰り道は運転しながら少し泣いた。
次回更新は3月15日(日)、20時の予定です。