息巻く藤吉郎に信長は、

「よし、まかせたぞ。まだやる事がたくさんあるからの。

美濃平定後は、小牧の居城を移す。難攻不落な親父殿、斎藤道三が館、稲葉山を我が居城にするぞ。

改修しての。家康とも同盟強化し、儂と共に働かせるつもりだ」

「稲葉山城を居城にする、その支度も抜かりなく並行して進めなければならぬ。

よいな、そうだな、長良川河川を天然の擁壁(ようへき)にする。あの気高い岩山の上の館を修繕する。居城するための準備が必要じゃ。

猿、調略活動を含め戻り準備にかかれ。また、小牧のように石垣も多く必要とする。まずは、美濃三人衆の引き抜きと合わせて手ぬかるなよ」

「御意、全て言わずとも以心伝心でござる。帰って美濃三人衆と穴太衆に調略を仕掛ける交渉を継続いたします。では御免」

下がろうとする藤吉郎に向かって、信長は語気を強めた。

「必要な物は出し惜しみするではないぞ。金銀、茶器、仰山だしてやれ」

「殿、早速手配いたします」

斎藤道三の病死を待たず、道三は息子竜興に殺された。予想どおり、竜興は家臣に見放され屋台骨から瓦解していく。

しかし、美濃攻略の小牧築城から約4年余り時間を要した。

この頃から藤吉郎は、自分より後に士官したライバル光秀の勢いに押されがちになり、他の宿老のように信長に扱われないか疑心暗鬼になりかけていた。

実際、光秀が最初に宇佐山城及び坂本城城主になり、藤吉郎は光秀に遅れること2年、長浜城の城持ち大名になった。

次回更新は3月13日(金)、19時の予定です。

 

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