美濃攻略の想い出
藤吉郎は、目を閉じて美濃攻略から岐阜城移転、光秀が台頭しはじめた頃のことを思い出していた。
小牧城天守の軍議後、信頼厚い藤吉郎と同じくして、好敵手となる様相を強めていた光秀も天守滞在時間が増えていた。それは、信長が、光秀に逢った日から光秀に重きを置いていた証しでもあった。
永年仕えてきた藤吉郎は、光秀の脅威をひしひしと感じていたが今日も天守で信長との会話を弾ませる藤吉郎がいた。
「さて、殿は今からなにをなさるおつもりで?」
「今日、軍議の後までも、そなたを留め置いたのは、そのことよ。
藤吉郎、小牧を築城したが、ここは少し手狭だと思わんか? 防壁には資金を浮かすため天然の川と堀を利用した。
だが所詮は平城だ。天下無敵とはいかぬ。水の利も薄い。天下布武に足る城を違う場所に求めないといけない」
信長はそう言うと、阿吽の呼吸で藤吉郎の回答を待った。
「そうですな、この小牧を拠点にして早々に美濃攻略の準備を行うが必定かと。その点、美濃勢は小牧城を見るなりさっと開け渡す城も現れもうした。それゆえ早めの戦術が必要かと存じます」
「そうだな。道三とは条約を結んでおるが、あの斎藤家は分裂の兆しがあるとの噂が絶えない。帰蝶も心配しておる。道三殿の体調もすぐれぬようだ。
そう長くは美濃の牙城は持たない、と見ておく方が得策かもしれんな」と懸念する信長に、
「家臣団は屈強でござるが、隙ができるかもしれませんな。あの息子たちは腑抜けゆえ、親父殿の天命が尽きた後が読みですな」と藤吉郎が言った。