彼女は流暢 (りゅうちょう)な英語を話した。早過ぎて木田の理解力が追いつかないと見ると、反応を見ながらゆっくりと何度も繰り返して話してくれたし、木田の拙い英語に辛抱強く耳を傾け、間違った英語を丁寧に修正してくれた。
聞けば、このNGOに雇われるまでは、子供たちに英語を教えていた時期もあったらしい。木田は、直ぐに彼女に打ち解けて、この島の様子も、そして少数民族への比政府の取り組みへの批判も、彼らが置かれている悲惨な状況も、あらましを彼女の口から聞くことができた。
ただ、NGOの活動の全体像や詳しい実態については、彼女もよく分かっていないらしい。分かっていることは、JハウスにいるNGOの正規の職員は吉田だけで、あとの日本人はみなボランティアということだった。
現地のスタッフと思しき人たちは、不定期で雇用された臨時職員に過ぎないようだ。だから吉田はマニラのNGO事務室にも頻繁に行き来して、ここには不在がちなのだという。
注1)蚊によって媒介されるウイルス性感染症。高熱、発疹、頭痛、関節痛、消化器症状をともない、通常は一週間程度の経過で回復するが、一部では重症化し、死に至る例もある。