イエローストーン、グランドティトン秋景色

青く輝く夏は遠くに過ぎ去った9月のグランドティトン国立公園。朝には初霜が降り、黄金色の秋も駆け足で通り過ぎようとしていた。

しかし、冬を迎えるにはまだ早い。季節の変わり目のほんの短い穏やかなときがそこにはあった。バックパックを枕に、日溜まりにしばし身をゆだねると、頬に吹く風が心地よかった。

先ほどまで歩いてきた丘陵はすでに紫色に変わり、短い秋の日差しはなぜか旅の心を急がせる。

「ウィーィイインーーー」

「ウィーィイインーーー」

とブルエルク(オスジカ)の嘶(いなな)きが穏やかな空気を切り裂き、遠く谷間に響きはじめると、つるべ落としに秋の日は落ちていく。

それまで必死に枝にしがみついていたアスペン(白樺)の最後の葉が風に飛ばされた。明日はこの風も木枯らしに変わるのだろうか。ロッキー山脈、つかの間の秋日和。ここはカメラマンの人気スポットだ。

9月も末になるとアスペンの林は黄色く色付き、ロッキーの山々に短い秋がやって来る。この季節はカメラマンにとって最高の時期だ。

紅葉の人気スポットには、毎年各地から有名無名のカメラマンが押し寄せ、中にはキャンピングカーで移動する人たちもいる。ボクは紅葉を追って南のグランドティトン国立公園から北のイエローストーン国立公園へとドライブするのが好きだ。

ジャクソンホールでレンタカーを借りて北上すると、左手にティトン山脈が現れ、その手前にあるスネーク・リバーの川沿いでは色付いたアスペンの葉が、まるで黄色いインクを流したかのような鮮やかさで出迎えてくれるのだ。

このスネーク・リバー沿いにビーバーの池を見つけたのは数年前の秋だった。川に続く細い道シュワバッカー・ランディングを下ると、川辺にはビーバーが小川をせき止めて作った小さな池がいくつもできていて、朝日に反射したグランドティトンの山頂を撮るのに絶好の場所だった。

そして翌年、同じ場所を訪れてみたら、ビーバー池はカメラマンたちの人気スポットとなっていた。多くのカメラマンとともに夢中になってビーバーたちにカメラを向けると、彼らは干ばつで水量の少なくなった池で相変わらずせっせと小枝を運んで働いていた。

ビーバーは日中はどこかで休んでいて、日暮れ時から行動する。鋭い歯で小枝を切り取り、池にダムや家を作る愛嬌者のビーバーたちと日の暮れるのも忘れて過ごした秋の一日だった。

 

👉『写真馬鹿、アメリカを撮る。』連載記事一覧はこちら

【イチオシ記事】「今日だけ、お願い」——僕には妻がいたが、彼女のことを無我夢中で抱いた。キスをし、胸を吸い…

【注目記事】LINEでリクエストしたバックハグ。「貴女といると落ち着きます」と、腕の中へ引き寄せられ、そのまま指で…