【前回の記事を読む】「人間を信用してはいけない」自然の掟を母から子へと伝えるバイソン。雪解けと誕生の季節を迎えたイエローストーン
1 イエローストーン&グランドティトン国立公園(アイダホ州、モンタナ州、ワイオミング州)
Yellowstone & Grand Teton National Park, Idaho, Montana and Wyoming
春は誕生のシーズン
オールドフェイスフルはイエローストーンの中心で、ホテルは冬場もスキー客用にオープンしている。すぐ前の広場では有名な間欠泉を見ようと噴火の時間になると人々が大きな輪を作る。
ボクはバイソンの写真を撮るために日の出とともに起き出してグランド・ループ・ロードをドライブした。
動物は朝と夕方が最も活動する時間帯で、昼間はほとんど昼寝している。深い霧が立ち込めて強い朝の光がスポット状に反射する。
ギボンヌ川の近くで運よく子供を連れた群れを発見した。ボクは車を停めて、望遠レンズを掴んでわからないように接近した。しかしすぐに群れのボスに見つかった。
ある程度の距離を保っていると何もないが、少しでも近づき過ぎるとすぐに威嚇する。可愛い親子の姿を白い温泉の蒸気を入れて撮りたかった。生まれたばかりの赤ん坊はすぐに疲れて辺り構わず寝込んでしまう。
草を食べるのに夢中な母親だったが、ボクの姿を見つけるとすぐに子供のそばに近づき警戒態勢をとった。ボクは気が引けてもうこれ以上この家族の邪魔をすることができなかった。
バイソンの群れが作った泥んこ道を引き返しながら何度も膝まで穴にはまり、ブーツもパンツも泥だらけとなった。
ようやくループ道路まで辿り着き、ギボンヌ川の身を切るような冷たい雪解け水で泥んこのブーツを洗っていると、目新しい看板が目についた。
「この辺りでは最近冬眠から覚めたクマが目撃されており、バイソンの子供が殺されています。人間は絶対にこの地区に立ち入らないこと」。ボクの背筋に雪解け水より冷たい恐怖が走った。