「あの話は実に酷い話だわ。報告のあと、じっくり調べさせたぞ。

すると奴は、織田家から禄を得ながら、隣国駿河、宿敵今川義元へ密偵として情報を垂れ流しておったわ。この尾張の地でそのような卑怯者が居るとは全く想像できなかったぞ。

戸部は、儂の動向や尾張の石高、兵の数、鉄砲隊の人数、商いの流れ等様々な情勢の一部始終を逐次駿河の今川義元に漏洩しておった。

実に卑劣な奴だった。儂は、そんな汚い輩に直接取り調べや面会も一切したくなかったわ。

儂が直接奴に手を下さず、他でもない敵の今川義元に奴を成敗させてやったわ」

藤吉郎は、居ても立っても居られず、

「どんな策を使って、裏切り者を成敗したのでございますか?」と尋ねた。

「なに、難しいことではない。あ奴尾張領の鳴海あたりから儂らの動きを、今川義元に書状で丁寧に逐一書いて送っていたのよ、律儀に毎日な。情報を漏洩させ、尾張の情報を筒抜けにさせておったわ。

それで儂は一計を案じたのよ。奴を利用して、戦わずして成敗させようと」

「殿様、どうやって、成敗されたのでござるか?」

藤吉郎は興味津々だった。